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修理面の仕事⑤

2017年1月11日
みなさん、こんにちは。

今日は一気に冷え込んでおりますね。
こういう時、体調を崩しやすいので、よ~く体のメンテナンスしてくださいませ。


さて、修理面の仕事も、いよいよ今日が最終章!


完成に至るまでの様子をじっくりご覧ください!!

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前回はここまででしたね、彩色終わりの状態です。


彩色の中で最も重要とされる「瞳入れ」が終わり、面そのものに表情が生まれてきました。


あと残すところは「毛植え」と「額付け」です。


「毛植え」ですが、小林工房では以下のように種類を分けています。



●神面系・・・シャグマ毛(ヤク毛)

●鬼面系(男鬼)・・・馬毛(ウェーブあり=荒毛)

●鬼面系(女鬼)・・・馬毛(ウェーブなし=直毛)

●特殊系・・・人毛(人間の頭髪)、シュロ毛(植物の棕櫚の繊維)など


もちろん、ご要望に応じて内容は自由に変更しておりますが、面の種類と毛の性質を見極めた結果、今のところこのスタイルにしています。

たまに混合毛といって、色を混ぜたり(ゴマ毛)、素材自体を混ぜたり(ブレンド毛)します。
ブレンド毛は手間がかかりますが、独特の風合いが出るので、個人的に好きです。


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シャグマ毛(神面系に使用)


【舞面】酒呑童子

馬毛(ウェーブあり)=荒毛 (男鬼面系に使用)


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馬毛(ウェーブなし):直毛 (女鬼面系に使用)


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混合(ブレンド毛) ※黒と茶を混合


狐(黒)

混合(ブレンド) ※直毛と荒毛を混合


と、こんな感じです。

面の種類によって、「人間に近い神様」 「荒ぶる鬼」 「女性の変化した姿」 など、毛の種類1つによって、表情が変わってきますから、ここも神楽面職人としては、こだわりどころです。


さ、修理面の方ですが、「鍾馗」と「鬼」の1対ですので、小林工房の流儀に従い、「鍾馗」は「シャグマ毛」、「鬼」は「荒毛」にしました。


その毛植え後の表情がこちら!



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鬼面には「荒毛」を植毛。


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鍾馗はもともとこの状態から・・・


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こうなりました! 「シャグマ毛」を植毛した状態です。


いかがでしょうか、随分と表情が出てきますよね!

もう一つ付け加えていうと、毛植えは 「穴開けが命」ということです。


穴を開ける時点で、どの方向に毛を向けたいか、また、毛と毛との重なり具合や、全体に対してのバランスなど、よ~~~く吟味しつつ穴を開けることが重要なのです。


なので、今回の修理面は(鍾馗面の方)、もともと50本近い穴が開いていましたが、その本数をそのまま入れると「毛むくじゃら」な顔になってしまいます。

よって、必要な個所だけ活かすことにし、同時に「ここは新たに開ける必要がある」という箇所を追加しました。


この「足し算」「引き算」の判断が、神楽面職人に必要なことといえます(偉そうですが・・・)。




ということで!




大変、お待たせしました。

いよいよ、完成作品のお披露目です!!



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ど~ん!  完成いたしました!!


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左寄りから


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右寄りから


いかがでしょうか!


これが修理後の姿です。


では、もっとわかりやすく 「 before → after 」でお届けしましょう。
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before (修理前)


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after (修理後)


また、鬼面だけでいうと、このような変貌ぶりとなります。


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いかがでしょうか!

これが修理面の仕事の全貌であります。



ざ~~~っと紹介させていただきましたが、神楽面の修理は、単純に「新しくすること」ではありません。

「末永く愛用されるもの」をつくることが、一番の目的なのです。



そのためには、あらゆる手段や材料を屈指して、作業を進めていかなければいけませんが、やむを得ず、元型を傷つけることもあります。


それが本当に正しいことか、、、については、今の時点では分かりません。




ただ、はっきり言えることは、作り手と使い手の思いが合致して、愛用されるものは長生きする、ということです。



もう一つ、付け足すと、、、。

「修理する必要がないものは、むだに手出しをしない」ということ。



歴史的価値のあるもの、塗り替えない方がその団体(個人)にとっていい、と判断したものは、迷わず「保存」を勧めます。


この見極めもまた、神楽面職人の仕事です。



過去、何度も見てきました、「あ~、なんでこんなことを」という作品たちを。。。



木彫り面にペンキ、胡粉下地にスプレーニス、よく見えないからと目や鼻をイガグリ開けた大きな穴・・・。



それをしなければ、あわや「博物館」行だったであろう貴重な作品が、とても残念な結果になっているものが多く存在します。
それはそれとして、批判するわけではありませんが(それもまた歴史ですので)、ただ、神楽面職人として「素晴らしい作品を残す」努力も必要だと思っています。


先人たちの絶え間ない努力と実力。


敬意をもって、仕事をしていきたいものですね。



今回の修理依頼の面も、これから先40~50年と長生きしていただき、家を守り続けてほしいと思っています。



ということで、これにて、「修理面の仕事」はおしまいです。


また、次の仕事に向けて、頑張りますぞ~~~!!



ではでは、さようなら!


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最後に自分の写真(汗)。  なるしすと~(笑)。 
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