これ、一つ作るだけでも、とても大変なんですが、なんと注文の数は5つ!!
5枚ですよ、5枚!!
なぜかというと、石見神楽演目の中で最長編演目といわれる「五神」で使われるからです。
五神とは、春夏秋冬・東西南北を司る4人の兄妹神に、もう一人弟がいて、この末っ子王子「埴安大王(五郎王子ともいう)」が「自分にだけ土地が与えられないとは、どういうことだ!自分にもよこせ!!」と乱を起こすのです。
やがて、兄妹喧嘩となり、この合戦の収拾がつかなくなったところで、「所領分けの神」が現れ、「まあまあ、お前たち、私の言う通りにして皆平等に土地を分配しあいなさい」と仲裁に入り、皆仲良く暮らせることになった、という話。
これが、農業の指針となり、地域社会における共存・共同の思想が込められていることから、秋祭りではこの演目を最後の演目で締めくくることで、「国家安穏」「氏子繁栄」を祈願しているのです。
とまあ、ざっくり説明しましたが、この演目で登場する五人の神々が使用するのが、この「ちりとり面」なのです。
(石見地方のすべてがこれを使用するわけではありません。素面であったり、神面を使用されたりと地域によってさまざまです)
大きくて、手間も技術もいることから、「神楽面職人としての登竜門」ともいわれます。
この仕事をこなせてこそ、「一人前」といえるほど、重要な仕事。
これを、小林工房10年目にして、ご依頼いただいたのです。改めて、感謝。